
はじめに
身近にある「本」。読み終えた後、どうしていますか?
雑誌や漫画などは手頃で、誰もが手に取ったことがあるはずです。しかし、それらの処分はどうしてきたか…“捨て方”まで考えて、購入する人は少ないような気がしませんか?
日本国内で処分される本の数は年間数億冊に上る可能性(約3億冊以上?)があるそうです。正確な数値を得るためには、書籍に特化した詳細な統計が必要で、現在のところ、そのような統計は存在しないため、この記事の数値はあくまで推定値となります。
(参考: 出版流通に関するデータ)
私たちも清掃現場のほとんどで本を回収(処分)しています。ある現場では一軒のお宅から数百の本を回収したりする場合もあります。“捨て方”によっては、資源として多用に利用できる、価値ある“資源ゴミ”になる「本」について、今回は考えてみました。
年間に捨てられる本の数
日本国内では、年間で10億冊以上の出版物(本・雑誌など)が発行されていると言われています。そのうち、売れ残りや、販売されずに返品されたものや、読み終えた後に処分されたものなど、数億冊単位で処分されているのが現実です。
たとえば、ある調査では、年間に発行された本の3〜4冊に1冊は売れ残りとして返本され、約30~40%程度が流通過程で廃棄やリサイクル(3~4億冊が処分)されているというデータもあります。特に雑誌は回転が早いため、その割合はさらに高くなる傾向にあるそうです。
さらに、一般家庭からも、古くなったり不要になった本も捨てられます。自治体の粗大ごみ・資源ごみ回収や古本回収業者を通じてリサイクルされることが多いですが、相当数が焼却処分されているそうです。現に上記で記載したように、私たちの清掃作業の現場でも高い頻度で、本の回収をしており、年間数千冊は処分しています。
処分される要因と行き先
処分される要因
様々な要因が積み重なり、毎年大量の本が「読まれないまま」「再利用されないまま」処分されています。
- 売れ残り(返品された本が再販されず廃棄される)
- 古くなり、内容が陳腐化した
- 保存スペースが足りない
- デジタル化の影響で需要が減少…etc
処分の行き先
捨てられた本の多くは、いくつかのルートを通ります。
- 古紙回収(リサイクル):
家庭や事業所から出された古本は「雑誌類」として回収され、製紙工場に送られます。 - 焼却処分:
汚れがひどいものや、リサイクルに向かないものは可燃ごみとして処理されます。 - 中古市場へ:
古書店やネットオークション、フリマアプリなどで再利用されるケースもあります。
この中で、環境負荷を減らすカギとなるのがリサイクルの仕組みです。
資源の有効活用
紙のリサイクル率の向上
- 日本の紙・板紙のリサイクル率は高水準とされていますが、それでも回収されずに廃棄される紙もあります。
- 新聞紙や雑誌、段ボールなどを回収・再生することで、新たに木材を使う量を減らせます。
紙のリサイクルとその仕組み
回収された本は、まず分別・選別された後、製紙工場へと運ばれます。
製紙工場では、以下のような流れで再資源化が行われます。
- パルプ化:紙を水と混ぜてドロドロにし、インクやホッチキスの芯などを除去。
- 再製品化:再び紙として成型され、コピー用紙や段ボール、トイレットペーパーなどになります。
- 用途に応じた再利用:品質の高い紙は印刷用に、低品質のものは梱包材などへ。
リサイクル率の高い日本では、新聞紙で約80%、雑誌でも約60%以上が再生利用されているといわれています。
森林資源の保護
- 紙の原料となる木材の消費を抑え、森林伐採を減少させることができます。
- 森林はCO₂を吸収する役割があるため、温暖化防止にもつながります。
環境負荷の低減
ゴミの減量
- 紙ごみが一般ゴミとして焼却されると、CO₂が排出され、環境に悪影響を与えます。
- 古紙を適切に回収すれば、焼却や埋め立て処分を減らせるため、環境負荷が軽減されます。
水資源の節約
- 古紙を再生紙にする際の水の使用量は、新しい紙を作る場合の約1/3と少なくなります。
- さらに、製造時に発生する汚水の量も削減できます。
経済的メリット
製造コストの削減
- 再生紙の生産は、新しい紙を作るよりもエネルギー消費が少なく、コストを抑えられます。
- 企業や自治体のコスト削減にもつながります。
リサイクル産業の活性化
- 古紙回収業者、製紙業者、リサイクル関連の産業が活性化し、雇用の創出にもつながります。
社会的意義
循環型社会の実現
- 日本は「循環型社会形成推進基本法」に基づき、ゴミの削減・リサイクルを推進しています。
- 自治体や企業と市民が協力し、持続可能な社会を作ることが求められています。
誰でもできることから
捨てられる本を少しでも減らし、資源の循環を促すために、誰でもできることは何でしょうか?
- 不要な本は寄付・回収へ:図書館や福祉団体、リサイクルボックスへ持ち込む。
- 中古販売・シェアリングの活用:フリマアプリやブックシェアサービスを利用する。
- 紙ごみの正しい分別:本もリサイクル可能な資源であることを意識する。
- 環境意識の向上:学校や地域のリサイクル活動を通じて、環境意識の向上を維持する。
一人ひとりの行動が、年間に捨てられる何億冊という本の未来を変える一歩になります。
まとめ
古紙回収は、資源の有効活用・環境保護・経済的メリット・社会的意義の4つの観点からも重要です。私たち一人ひとりが正しく分別・回収に協力することで、持続可能な未来に貢献できます。どんな物でも捨てる時は必ず来るでしょう。しかし、「ごみ」ではなく「資源」としての可能性を見つけることで、大きなメリットを生み出すことも出来ます。
また自分自身も、この記事を書くにあたり、「物を大切に」、、、この言葉の意味を、これまで以上に広く理解できたような気がします。物の「捨て方」まで大切に考えることで、持続可能な社会が実現できるのだと思います。こうした考えを共有できた人から、少しずつでも、意義ある行動で未来を良い方向へ変えていきましょう。
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